漆紙について

日本の漆器は縄文時代と弥生時代で一つの区切りが有り、この概念は全く異なります。
その要因は中国大陸から漆器技術が伝播した時期が弥生時代から始まる為で、漆器技術そのものの歴史は発掘資料を検討する限り、日本漆器技術が古い歴史を持っていますが、それらの技術や概念は弥生時代後期に入って来た大陸伝播技術によって、すべてが入れ替わって行きました。
そしてその中で比較的初期段階から存在した渡来技術の中で「乾漆」(かんしつ)と言う技術が有り、この中では躯体に紙を貼って、その上から漆塗りを施した技法が有り、これが後に千宗家にも関わりの深い「一閑張り」(いっかんばり)の技法です。

「漆紙」の技法はこうした「一閑」の技法と平安時代の遺構から発見される書簡文書に漆が塗られた出土品などの経緯を踏まえ、漆器よりは紙器に重点が置かれた思想を基に「竹山紙器株式会社」と「夏未夕漆綾」の技術提携によって製作された、伝統的であり乍新しい思想の製品です。

平安時代の漆文書は基本的には廃品利用でした。
必要が無くなった文書などを、漆が入れられた桶の蓋として使ったものが現代に残って漆文書と呼ばれたもので、その経緯は文書を保管する意味合いで漆が塗られたケースは少なかったものと見られています。

漆紙はこうした意味合いでは「一閑」と漆文書の中庸と言う事が出来ます。
工体を紙そのものに求め、それを補強する意味で漆を使うと言う思想を持っています。
従って、「漆紙」は漆器ではなく紙器であり、紙の風合いを大切にして、例えば少し濡れたタオルで拭いても大丈夫な程度の防水機能と、紙の風合いのバランスの基に製作されています。
防水機能は完全では無い事、また紙が持つ強度以上の強度は有りませんが、柔らかな風合いと漆の素材感を楽しんで頂ければと思います。